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――パンパン
母が手を上げ手を鳴らした。

「これ片付けて下さい」

お手伝いの女の人2人が俺たちの食べたものを片付けはじめる。

「弥生様。今日からですわね」

「すばらしいご入学式になるといいですわね」

お手伝いの2人は満面の笑顔で俺の顔を見た。

「そうだね」

11年たった今でもこの弥生様と呼ばれるのだけはなれない。
父さんが化粧品会社の社長だったからだ。
そうじゃなければ家の中にお手伝いさんなんていないだろう。
それに、今から行く学校も金持ちの奴らばっかりの学校。
小・中みたいに「おおほ」系きゃらばっかりなんだろうなぁ。

「さぁ、準備できたら車に行きなさい」

「はい、はい」

「返事は一回!」

母さんはどう見ても普通の主婦と変わらないだろう。
金をいっぱい持ってるからといって無駄使いはしないし…
むしろ節約好きな気がする。
そんなことを思いながら俺は車へ向かった。




「弥生様。お待ちしておりました」

運転手の佐々木が扉を開ける。

「今日はいい天気ですね。きっと良いご入学式になりますよ」

「そうだといいですね」

母さんが車へ向かってきた。
佐々木はすぐに扉を開ける。

「奥様。おはようございます」

「おはよう。今日もよろしくね」

「はい」

俺らを乗せた車は城崎学園へ向かった…

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