愛して。Ⅱ ~不良俺様ボーイズ×絶世美少女~【完】
加賀美と言えばあの人。
加賀美、颯。
加賀美は、颯の名字だ。
頭の中がグルグルと回る。
加賀美は颯の名字で、
旅館も加賀美で、
あたし達はここに泊まるんだよね…?
もしかして、いやもしかしなくてもここは、
「颯の家……?」
「そういうこと」
いきなり聞こえて来た声に、驚いて体が震える。
振り向けば、颯が立っていて。
スッとあたしの前を通り過ぎたかと思うと、旅館の扉を開けた。
「……ただいま」
薄い笑みを浮かべてそう言って、あたし達を中に招き入れる。
だだっ広い玄関のようなそこは、あたし達7人ぐらい優に受け入れた。
「おかえり。みなさんも、お久しぶりね」
見上げれば、この旅館の女将であろう50代くらいの女性。
余り颯に似ていないけれど、きっと颯の母親だ。
お久しぶりです、とにこやかに挨拶をする彼等を横目に、菜穂の手をギュッと握る。
菜穂もあたしの心境がわかったのか、握り返してくれた。
――“母親”
それは、あたしにとって初めて見た母親のようなひとだった。