愛して。Ⅱ ~不良俺様ボーイズ×絶世美少女~【完】





あたしの母親とは似ても似つかない。




自分の子供を見て柔らかく笑うその姿も、


その子供の友達に話し掛けるその姿も、


仕事をしているとわかる浴衣を着たその姿も、




あたしが知らない“母親”と言う生き物だった。








「あら?見た事の無い子ね。誰かの彼女さん?」


「あ、え…と」




急に目を向けられて、狼狽える。


菜穂の手を握る手に力を入れた。


どうすればいいか、わからなかったから。




「菜穂ちゃんのお友達?」




この颯の母親は、菜穂のことも知ってる。


きっと蓮のことも、みんなのことも、もちろん颯のことだって知ってる。


同じように、みんなもこの人を知ってる。


知らないのはあたしだけ。


“母親”を知らないのは、あたしだけ――…




「真梨、大丈夫?顔色悪いよ?」




菜穂の言葉に、大丈夫と呟く。


大丈夫、大丈夫。


自分の中でもそう繰り返して。


大丈夫、知らないのは当たり前なんだから。


“母親”を知っていようが知っていなかろうが、この人はあたしを知らないし、あたしもこの人を知らない。


知らないなら、知ればいい。


この人は確かに颯の“母親”であるけれど、それ以前に一人の人間だから、大丈夫。


そしてきっと、この人は裏切らない。


柔らかい笑みを浮かべてあたしを見るこの人は、あたしをきっと裏切らない。




「水川真梨…です。蓮と付き合ってて、」


「まあ、蓮くんと?!」




< 25 / 378 >

この作品をシェア

pagetop