愛して。Ⅱ ~不良俺様ボーイズ×絶世美少女~【完】
あたしの母親とは似ても似つかない。
自分の子供を見て柔らかく笑うその姿も、
その子供の友達に話し掛けるその姿も、
仕事をしているとわかる浴衣を着たその姿も、
あたしが知らない“母親”と言う生き物だった。
「あら?見た事の無い子ね。誰かの彼女さん?」
「あ、え…と」
急に目を向けられて、狼狽える。
菜穂の手を握る手に力を入れた。
どうすればいいか、わからなかったから。
「菜穂ちゃんのお友達?」
この颯の母親は、菜穂のことも知ってる。
きっと蓮のことも、みんなのことも、もちろん颯のことだって知ってる。
同じように、みんなもこの人を知ってる。
知らないのはあたしだけ。
“母親”を知らないのは、あたしだけ――…
「真梨、大丈夫?顔色悪いよ?」
菜穂の言葉に、大丈夫と呟く。
大丈夫、大丈夫。
自分の中でもそう繰り返して。
大丈夫、知らないのは当たり前なんだから。
“母親”を知っていようが知っていなかろうが、この人はあたしを知らないし、あたしもこの人を知らない。
知らないなら、知ればいい。
この人は確かに颯の“母親”であるけれど、それ以前に一人の人間だから、大丈夫。
そしてきっと、この人は裏切らない。
柔らかい笑みを浮かべてあたしを見るこの人は、あたしをきっと裏切らない。
「水川真梨…です。蓮と付き合ってて、」
「まあ、蓮くんと?!」