夢幻の都
「この壁を伝って行けば、城邑の門にたどりつくわね。ほらね、あたしの直感どおりに〈屋根〉があったでしょ?」


「さあね」

ランダーは、皮肉混じりに言った。

「ひょっとしたら外壁だけで、中はからっぽかもしれない」


ソニアは、ふんと鼻を鳴らした。


「中に入ってみなきゃ、わからないわよ。行って確かめましょ」


二人は壁づたいに、しばらく歩いた。



門はあった。



荒削りの彫刻がほどこされた二本の門柱が深い霧のさ中から、浮かび上がるように見えていた。

門扉は閉まっていないようだが、その向こうは、霧に阻まれて何も見えない。

何の物音もしない完全な静寂があたりに満ちていた。


「やはり、無人の廃墟じゃないのか?」

ランダーは、門柱の彫刻を確かめながら言った。

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