夢幻の都

「象徴化されているが、これは白樺の木と鷹だ。北部では、古い時代の城邑によく見られる主題なんだ。大地の女王と天空の王をあらわしている」


「この辺まで来れば、もう北部のものがあっても当然じゃない?」


「いや。このあたりは、二世代前のフリード大王の北部遠征の時に征服されている。彼は、征服した城邑を全て焼き尽くし、南部風の新しい城邑を造り続けた。それに普通の城邑なら、外堀があるはずだろう? ほら、足元を見てみろ。俺達が歩いてきたのは干上がって、土や枯葉で埋まった外堀の跡だ――おい、ソニアどこへ行くつもりだ!」


「この中よ。廃墟でも休める場所があるかもしれないでしょ?」


「どうあっても、自分の直感が正しいと証明したいというわけか?」


「馬鹿言わないでよ。この霧に我慢できないだけよ」


天性の楽天家のソニアが、霧ぐらいでこんなに嫌がるとは思ってもみなかった。

ランダーはソニアの後を追って城邑の門を通り抜けた。

濃い霧が、薄く白い布を一枚一枚はがしていくように、薄れていった。

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