ONESTAR
「あら、あたしもお化粧なおした方がいいかしら。」

「ちょっと洗面所でヒゲを……」

「わーっ!!」

洗面所に向かおうとする親父をドアの前に立ち塞がって止める。

「何だ、ヨシアキ。びっくりするじゃないか、大きな声をだして。」

「いや、洗面所は今、彼女が着替えに……」

「あ、ああ、そうか。そりゃ悪かったな。」

親父はすごすごリビングのソファにとって返す。

「いや、なんか緊張するなあ。どんな子なんだ、ヨシアキ。」

「どんな子って。か、かわいい、かな?」

「おまえ、モテるんだろ?バレンタインデーの時、大変だったって、母さんが言ってたぞ。つきあってどれくらいだ?」

「どれくらい……知り合ったのはもうずいぶん前なんだけど……」

つきあってはいない。

でも、キスしたかも。

ああ、初めての二人っきりの朝を迎えたかったのに。
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