愛花
旅立ち
私、真中妖子(マナカアヤコ)は祖父母に育てられた。

母は幼い頃に亡くなった。

゛妖子…ママはパパと逝きます…許して…″

母の遺書にあった私に宛てた言葉だ…

母は学生の頃に教師だった父と駆け落ちした。

母を探していた祖父が母を見つけたとき、父は貧しい生活に困り果て、妻のもとに窮状を訴えるために戻ったまま帰ってこず、母は幼い私を抱えて途方にくれて死のうとしていた。

祖父は傷ついた母と私を優しく迎えてくれた。


つかの間の幸せだった…


母は父と心中してしまった…

いつのまに再会していたのか…


誰も知らないうちに私の両親は亡くなってしまった。

祖母は私を厳しく育てた。
母のようにならないように…

祖父は私に絵を教えてくれた。
自然の中を歩いては季節の変わりゆく様を…木々のざわめきを…花のはかなさを…そして私に愛を惜しみなく注いでくれた。

私は祖父が大好きだった…

厳しい祖母は少し苦手だった…

私は小学校に行く年になった。
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