愛花
゛そうか…その絵に妖精はいたかい?″

゛いたわ。幸せそうに葉っぱと葉っぱの間を飛んでいた…″

゛それがお母さんだよ。そうか…幸せだったんだね。あーやがその絵を見ることになるのも何かの縁かもしれないね。″

゛お母さんだったんだ。″

私はその絵を思い描いていた。

愛していたんだ…と思った。

祖父は言った。

゛あーや、約束してほしい。藍野さんのところには行かないでくれないか。″

゛えっ!何故?″

゛おまえのことを知られたくないんだ。藍野さんは圭織を道連れにしたことだけでも苦しんでおられた。そのうえあーやが遺されていたことがわかったらまた苦しまれるかもしれない。できれば私たちもお父さんのことは思い出したくないしね。″

゛…わかった。このことは誰にも言わない。でもミヤビは友達なの…″

゛わかっているよ。あーやの友達は関係ないよ。でもこのことは言わないほうがいいね。″

私は頷いた。

これがミヤビへの最初の秘密だった。

私が絵を描くと父と母の愛は花を咲かせていくのかもしれない。

どんな花が咲いていくのか…

大輪の花なのか…

可憐な小花なのか…

果たして私に咲かせることが出来るのかしら。
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