愛花
祖父の容態は一向に良くならなかった。

日一日と弱っていく祖父を見るのは辛かった。

祖母は献身的に看病していた。

祖母も看病の疲れから体調を崩していた。

私はなるべく祖父や祖母の手伝いをするようにした。

イラストの仕事は家で出来るし食事の支度や掃除洗濯など家の用事は私がするようにした。

祖母にはなるべく祖父に付いてもらえるようにした。

家の用事が終わると私も祖父の病院に行く。

祖父はいつも笑顔で迎えてくれた。

私は病室でスケッチブックに来るときに見た景色や物を描く。

祖父はそれを見ては喜んでくれる。

私の日課だった。

ある日祖父は言った。

゛あーやは進学するの?″

゛しないよ。絵を描いてお仕事にするの。″

゛美術の学校に行けばいいのに…″

祖父は言った。

゛もしも、私が死んでもおまえが生活していくだけの資金は貯えてあるんだから大丈夫だよ。″

゛死ぬなんて言わないでよ。私の花嫁姿を見てよね。″

゛そうだね″

祖父は遠くを見て言った。

そして私が高校3年の秋に母の許へ導かれていった。

祖母は一気に年老いていった。

私は祖父が望んだように美術の専門学校に進学することになった。
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