愛花
祖母の部屋はすっきりと片付いていた。

田村さんが話し掛けてきた。

゛真中さん、シャンソンがお好きでピアフってご存知ですか?
よく聞いてらっしゃいました。″

゛ピアフ…ですか?″

゛聞かれます?″

゛ぜひ″

田村さんがラジカセでCDをかけてくれた。

゛私は愛の讃歌しか知らなくて…でも聞いてたら感動するのもあって、意味はわからないんですけどね″

そういえば祖母はよく口ずさんでいた歌があった。

今思えばそれが愛の讃歌だった。

ピアフの歌は私の心に染み入ってきた。

涙が頬を伝う。

 おばあちゃま…
 この歌にはあなたがいる
 私を包んでくれる愛を感 じる

私は一晩祖母の部屋で過ごした。

田村さんも付き合ってくれた。

翌朝、私は祖母の遺骨を持って帰ることにした。

祖父と祖母を早く一緒にしてあげたかったから…

そして私はピアフのCDに励まされるように新しい生活を始めようと思った。

職員の方々にお礼を言って、田村さんは何かあったら相談に来るように言ってくれた。

嬉しかった。

私は一人じゃないんだ。

おばあちゃま、素敵な人を紹介してくれてありがとう。

またもうちょっと頑張ってみるわ。
< 60 / 70 >

この作品をシェア

pagetop