愛花
おばあちゃままで私を残して逝ってしまったの。

悲しくて寂しさがつのる。

 誰か、私を抱き締めて。
 愛してると言ってくれた人が消えていく…

涙が流れる。

田村さんが話し掛けてくれた。

゛真中さん、いつもアヤコさんのこと話されてました。
描かれたイラストをよく見せてもらいました。
素敵ですよね。
でも亡くなられる前にアヤコさんに知らせようとすると拒まれまして、ひと月だけ部屋を残しておいてあと1年、遺骨を保存して、それでもアヤコさんが訪ねて来なかったら知らせて、ご主人のお墓に入れてほしい…と言われました。″

゛そうですか。
祖母らしい気づかいだと思います。
祖父が亡くなったときの私を見て、考えたのだと思います。
でも私はもう1度会いたかった。
会って暖かい手で包まれたかった。″

田村さんがそっと抱いてくれた。

暖かさが伝わる。

 ああ!おばあちゃまはこの人の暖かさに癒されて逝ったんだ。

今、また私を癒してくれるんだ。

心の中にポッカリ空いた穴を塞いでくれる。

田村さんは気遣いながら祖母の話をしてくれる。

私をどれだけ愛してくれていたかがよくわかる。

その日の夜は祖母の部屋に泊まれるようにしてもらった。
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