愛花
母は祖父の娘である。

祖父は祖母と結婚する前に他に恋人がいた。

結婚するつもりだったそうだ。

しかし祖父は祖母と結婚した。

親の決めた結婚だった。

その時祖母にも他に恋人がいた。

互いにそのことを知った上での結婚だった。

結婚式を挙げ、それから各自の大切な人のもとに身を寄せることにしたのだ。

祖父はそれでよかった。

彼女も最初はそれでよかった。

そのうち彼女は身籠った。

彼女は不安になった。

当然のことだが父親は他に奥さんがいる。

私の子供は父のない子…いいえ父親はいる。

父親が育てるんだったらあの人の奥さんが母親…だったら私は何?

祖父は彼女に今までと何も変わらず暮らそうと言ったが彼女には納得出来る話ではなかった。

そうしている間にお腹は大きくなっていく…

彼女は心を病んでいった。

そして母は生まれた。

そして彼女は自ら命を絶った。

祖父は生まれたばかりの母を連れ、祖母のもとへ戻った。

祖母にも一緒に暮らす人がいた。

同じ頃、祖母も身籠っていた。

祖母も不安を抱えながら彼と暮らしていた。

彼は工事現場の監督をしており、危険な作業をしていた。

祖母が妊娠したことで彼はあらためて結婚を申し込んでいた。

゛お腹のこの父親は僕だ。結婚して普通の家庭を築くべきだ″

確かに彼の言うとおりだ。

親に正直に言って普通の家庭を持とう…

そんな矢先だった。

彼が事故で亡くなってしまった。

祖母はショックで流産してしまった。

そしてもう子供は出来ない体になってしまった。

祖母は心も体も傷つき、祖父のもとへ戻った。

母は圭織と名付けられ大切に育てられた。
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