愛花
初めて白いキャンパスに向かって下絵を描き始めた。

いつも優しく微笑むお父さん…

それにひきかえいつも気難しい顔であまり笑った顔を見せないお母さん…

そういえばあまり誉められたこともない。

圭織は両親を分析していた。

下絵が完成に近づくにつれ何か違和感を感じていた。

両親は普通の夫婦のはずなのになぜか違和感があるのは何故…

圭織はまだ何も知らなかった。

一生知らなくていいことだった。

圭織は父がアトリエにしていた部屋にいた。

父の絵を見て参考にしようと思った。

父の絵は水彩画で優しい色にあふれていた。

風景画がほとんどだった。

その中に一枚、人物画を見つけた。

その絵は人の目を避けるように一番奥に隠してあった。

その人は微笑んでいた。

幸せそうに…

゛誰?お母さん…違う!じゃあ…誰?″

゛お父さんの…恋人?″

圭織はまだ気付かなかった。

その人と自分がそっくりなのを…

仕事から帰った父に聞いてみることにした。

母には内緒で…

゛お父さん、絵のことで相談があるの。いいかしら?″

゛アトリエで聞こうか。″

゛うん!″

圭織は父とアトリエに入った。

母は食事の支度をしていた。

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