愛花
゛お父さん、下絵は出来てきたんだけど、どんな感じで仕上げたらいいかわからなくて…さっきも見てたんだけど…″

゛何を描いたの?静物画?風景画?″

゛人物画…″

圭織はドキドキしていた。

さっきまで見ていた絵を前に置いておいたのだ。

父は少し考えていたが

゛この絵を見たんだね。これは…お母さんじゃない。昔の知り合いだよ。きれいな人だろう。″

悲しそうな顔で言った。

゛恋人?″

゛そうだった…″

゛…″

゛亡くなってしまったんだ。″

゛…ごめんなさい。昔の悲しい思い出なのね…″

゛いや、いいんだ。圭織は誰を描いているのかな?″

゛お父さんとお母さんよ。出来たら見てね。下手でも笑わないでよ。″

゛わかったよ。楽しみにしてるよ。″

圭織はほっとした。

父は複雑だった。

圭織は父が描いていたように水彩画で仕上げた。

完成した絵を父に見せたとき、
゛圭織の優しさが絵に出ていい絵だ。次の作品も楽しみにしてるよ。″

母は絵を見て言った。
゛私はあまり絵はわからないけどよく描けてると思うわ。ありがとう!″

いつもめったに誉めない母に誉められて圭織はうれしかった。

幸せだった。
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