それでも、まだ。
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『…頼みたいこと?』
『そうそう。まあ、簡単なことだよ。』
レンはさらにニコニコしながら言った。
『レンさんがその笑顔で言うときは、ろくな事がないんですが。』
セシアは顔を引き攣らせた。
『酷いなぁ。セシアもアヴィルさんも。』
だがレンは気にもせずにクスクス笑った。
アヴィルにも何か言われたのだろうか。
『あ、ごめんね。えっとねー、真理ちゃんを見張っててほしいんだよ。』
『…何故です?』
『だから、一応だよ。そんな怖い顔をしないでよ。』
…いつの間にか顔をしかめていたらしい。
セシアは1度深呼吸をして、改めてレンを見た。
『ハハッ、大丈夫だよ。見張るっていっても、真理ちゃんが1人で部屋に出ないようにしてくれればいいし。』
『…任務や修行のときは?』
『そのときは僕かジルが変わるから。………ただ、』
『?』
『もし、不審な動きを見せたら、そのときは…………殺せ。』
『――!』
その場の空気が冷たくなったような気がした。
『僕たちは、殺し屋だよ?もちろん、情に流されるようなことがあってはならない、よね?セシア。』
『…は、い。でも…』
『僕の話はこれだけだよ。もう寝なよ。明日もセシアは任務でしょ?』
『…はい。あの、レンさ』
『僕ももう寝るから。あ、それとも添い寝してくれるの?僕は大歓迎だけど。』
犯罪級の笑顔できれいな鎖骨をちらりとみせられながら言われて、私の顔はみるみると熱を持っていった。
『っ!け、結構ですっ!!おおおやすみなさい!!!』
すぐに踵を返して、後ろでレンの笑い声を聞きながら部屋を後にした。
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