それでも、まだ。

++++++

『…頼みたいこと?』


『そうそう。まあ、簡単なことだよ。』



レンはさらにニコニコしながら言った。



『レンさんがその笑顔で言うときは、ろくな事がないんですが。』


セシアは顔を引き攣らせた。


『酷いなぁ。セシアもアヴィルさんも。』


だがレンは気にもせずにクスクス笑った。

アヴィルにも何か言われたのだろうか。



『あ、ごめんね。えっとねー、真理ちゃんを見張っててほしいんだよ。』


『…何故です?』


『だから、一応だよ。そんな怖い顔をしないでよ。』



…いつの間にか顔をしかめていたらしい。


セシアは1度深呼吸をして、改めてレンを見た。



『ハハッ、大丈夫だよ。見張るっていっても、真理ちゃんが1人で部屋に出ないようにしてくれればいいし。』


『…任務や修行のときは?』


『そのときは僕かジルが変わるから。………ただ、』


『?』


『もし、不審な動きを見せたら、そのときは…………殺せ。』


『――!』



その場の空気が冷たくなったような気がした。



『僕たちは、殺し屋だよ?もちろん、情に流されるようなことがあってはならない、よね?セシア。』


『…は、い。でも…』
『僕の話はこれだけだよ。もう寝なよ。明日もセシアは任務でしょ?』


『…はい。あの、レンさ』
『僕ももう寝るから。あ、それとも添い寝してくれるの?僕は大歓迎だけど。』



犯罪級の笑顔できれいな鎖骨をちらりとみせられながら言われて、私の顔はみるみると熱を持っていった。



『っ!け、結構ですっ!!おおおやすみなさい!!!』



すぐに踵を返して、後ろでレンの笑い声を聞きながら部屋を後にした。


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