時を止めるキスを
ジョークにしてはセクハラすぎる発言をした目の前の男に、ポカンと口を開けたまま反応出来ない私。
いやいや、ちょっと待とうか。平和な職場になんて卑猥なフレーズを放つんだ、この上司は。日々仕事に没頭しすぎたあまり、とうとう頭の中のネジのひとつでも外れたのか?
立ち尽くしたままの私の頬にそっと触れたチーフの骨ばった手の甲が、何度かそこを往復していく。ぞくり、と泡立つような感覚に動けない私の顎をクッと引き上げた。
「別の男に任せて抱かれるのもテだろ」
普段の仕事ぶりからはおよそ想像出来ない言葉を、サラリと言いのける目の前の男は上司だというのに。呆気に取られるばかりの私の唇に触れ、幾度も吸い尽くすようなキスを重ねてきた。
その後、すっかり口紅の取れたそこをなぞる手つきは、間違いなく慣れている。言葉を紡ぐのに躊躇いを見せれば、ニヤリと弧を描いて微笑するから、わずかばかり残っていた平常心も一蹴されてしまう。