時を止めるキスを


「はい?…あ、三浦(みうら)くんどうぞ」

決意を新たにPC画面を注視していたところ、背後から届いたのは秘書室における貴重なメンズ社員の声。その主はこの部署では最も若い三浦くんで、私が振り返ると小さく頭を下げた。


「あの、帰りに時間ってないですか?」

「ん?どうしたの?」

「それが、……実はちょっと相談が、」

言い淀んでいるその顔で、プライベートのことだとすぐに察しがついた。


甘い顔立ちに穏やかな性格をした彼は、担当する役員をはじめ部署内でも可愛がられるマスコット的存在となっている。


だがしかし、入社当時に彼の指導役を任されていた私に最も懐いている点は不思議なもの。


本人いわく、彼のお姉さんと性格がそっくりで安心するのだとか。それを知ってからは、すっかり飲み友達のような間柄になっていた。


今回の相談内容もきっと同じはず。——高校時代から付き合っているという遠距離恋愛中の彼女のことだろう。


「ん、大丈夫!」

「ホントですか?急にすいません!」

ちなみに、私にも彼とは真逆の可愛げがない弟がひとりいる。それも相俟ってか、弟と同年の子に頼られると放っておけないのは姉気質かもしれない。


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