時を止めるキスを


「は、はい……っ!」

「昨日作成した資料も頼む」

「かしこまり、…ました」

どうにか返事をすると、急いで目を逸らした。ずっと視線を受け止めているのは危険な気がしたから。



秘書課を統括する、総務部の頭のキレる男。――すなわち秘書室内で彼に太刀打ち出来る者は、誰ひとりとしていない。


そのまま佇む三浦くんにさっきの続きを言おうとしても、今もなお横から感じる鋭い視線をスルーして言葉を紡げる猛者ではない。


当然のように、“ごめんね”と小声で言うのが精一杯。それは彼も同じらしく、苦笑しながら首を何度か振って自席に戻って行った。


あとは小さく溜め息を吐きながらも必死で仕上げた完璧な資料を手に、ノン・フレームのメガネを掛けたドラゴンの待つミーティングルームへ向かうばかり。


いそいそと秘書室を出て少し歩くと、Aのプレートがかけられた部屋に到着する。


そのドアの前に立った私は気づかれないよう深呼吸をして、ようやく手の甲でコンコンと扉をノックした。


「チーフ失礼します、浅川です」


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