時を止めるキスを


逃れようのない事実と向き合い、改めて間違いを正さねばならない時は目の前に来ている。


填めているリングは過去のもの。——同様に、すぐにでも手放なければならないものがあると。



次に誘われた時こそ、本当の意味で2つの恋からサヨナラをしよう。


周りのひとに迷惑を掛けない、なんて小さな頃に教わっていたことなのに。


どうして大人になるとそれすら忘れて、欲望のままに身勝手な振る舞いをしてしまうのだろう……。



「浅川――常務のスケジュールにこれも追加頼む」

「お疲れ様です。かしこまりました」


柚さんと話した日は、ドラゴン不在のままに終わってしまったのだが。


翌日は午後3時から全体会議があり、役職者のチーフはもちろん出席していた。


その会議から戻ってきて早々、声を掛けられた私は慌てて椅子から立ち上がった。


同じく出席していた常務から伝言を預かったようで、一枚の走り書きのメモ用紙を渡される。


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