時を止めるキスを
何も知らない新人と違って、勤続年数の長さは給与を代償に責任が増す。そう、一瞬のミスが命取り。――それがさらなる重圧となり、曇天となった私の心をさらに重くさせていた……。
* * *
「あー、……もう最悪だ」
大きな窓から望む景色はすっかり暗がり。そんな夜の虚しい静寂に包まれる秘書室には私だけが居残っていた。
この不気味さや孤独感に打ち勝とうと、ノートPCを前にして呟いてみたフレーズはどこか悲しいものがある。
あっけなく宙で弾けたはずのその独り言は寂しさまで呼び寄せるから、まさに二次災害もイイトコロ。
おもたせの件は常務にすぐさま謝罪をしたところ、気にしないで良いと言って下さった。常務の人柄にいつも救われているものの、自分の至らなさに泣きそうだったのも本音。
彼を気遣い、様々な点に気配るはずの私が、かえって迷惑を掛けているのだから本末転倒だと。