時を止めるキスを
「……は?」
たったひと文字で何が分かる?と目を丸くした私の声は、給湯室内のシリアスな空気をばっさりと断ち切るものとして響く。
親しくもなければ付き合いだって長いわけじゃない。となれば、ふたりの間にツー・カーが罷り通るはずもないのに、目の前の男は呆れた面持ちに変わった。
「あのですね、チーフ」
そのぞんざいな態度に、ヒクヒクと引きつり笑いを浮かべて、さきほどの真意を尋ねようとした刹那。
真横から長くて力強い腕が私の腰を引き寄せた。不意の力によろめくよりも早く、もう一方の腕に捕まってしまう。
荷物を支えているかのような態勢の彼は私を抱きしめることもせず、かといって離すつもりもないらしい。
出口までもう少しだったのに、何故だか遠ざかっていくような気さえしているこの状況。
まるで外へ逃げようとして失敗し、再び鳥籠に連れ戻された鳥にも似ているだろう。
どっと疲れて溜め息をついた瞬間、体が自分以外の力によって半周まわり、なす術もなく見上げた先で再び視線が重なった。