時を止めるキスを
「そもそも、終わる前に“何も”始まっていない」
ここで王手と言わんばかりに告げられたのは、これまでの攻防を一蹴させるひと言。
「そ、んな」
「違うのか?」
念押しは駄目押しとなり、独りよがりだった絶望感が心を一気に打ち砕く。
ここで私は、“はい、そうでした”と返して静かに引くべきなのに。とうとう我慢の限界点を超え、大粒の涙が両目から零れていた。
現実と向き合うのがこんなに辛いとは想像もつかなかった。いや、想像なんて優しいものだったのだと気づく。
同時にこれまで私は、のらりくらりと嫌なことから逃げていたのだと思い知らされるばかりだ。
「さいっ」
「ああ、最低で結構」
目の前の人物をヒドイ男を罵れないのも、此処で救われたという負い目のせい。——そもそも彼の誘いに乗った私が、一番ヒドい女なのだから。