時を止めるキスを


ただジッと彼を捉えたまま佇む私の脳裏によぎるのは、この関係の始まりのキッカケだったから。



「まだ分かんねえの?——いちばん大事なのは素直な気持ちだろ?」

「……ど、うして、」


「――鈍いのも大概にしろ」

“え?”と首を捻るよりも早く、引き寄せられていた腕の中はあたたかくて、やっぱり拒めない。


「は、なして」

どうにか小さく紡いだ拒否のフレーズも、「そんな言葉いらねえ」とにべもなく却下されてしまう。



私だって素直になりたい。ずっとこの腕の中にいたい。……でも、私がここで本音を言えば、ひどく傷つく人がいるから出来ない。


最後の最後に惑わす男の腕で葛藤を続けていると、乾いていたはずの涙が頬を濡らすばかり。


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