時を止めるキスを
それに、都内の一等地に不動産を所有する実家ってなに?……この男の正体がますます見えなくなってきた。
「事情はそんな感じ。分かった?」
「や、ややこしい……!そんなの知りませんっ!
ていうか……あれじゃあ、誤解するに決まって、」
「それは悪かった。でも、気になったらすぐに聞けばいいだろ?
俺にはあれが当たり前の状態で、人には不自然に映るとか思っていなかった」
「はぁあああ!?そ、」
“そんなに簡単に言わないでよ”と威勢良く反論するはずの口は、チーフの唇に封じられていた。
「ちょっ、んンッ……」
何故か、私よりも怒っているらしいのは非常に解せない。お陰で怒るタイミングを逃してしまったではないか。
なおも唇を噛みつくように吸い、リップノイズを立ててキスを仕掛けてくるのは流石のドラゴンといったところ。
真夜中の秘書室はエアコンの風だけを感じ、ほぼ無音の空間にふたりきりでいる現在。
捩じ込まれた舌を絡め合いながらする濃厚なキスに、鼓動はどんどん早まっていく。さらに妖しい水音が鳴る度、それは室内でみだらな音として響いていた。