時を止めるキスを


初めて名前を呼ばれた驚きのあまり、ぽかんとしてしまったのが運の尽き。


その瞬間、素早く落とされたキスはひどく甘くて、ここが電車内という恥ずかしさをあっさりと凌駕していた。



「今日が俺らの始まりだ」

そう言って笑顔を見せる男に、またもや心臓を掴まれた私は思わず泣きそうになっていた。


気恥ずかしさから、遠慮がちに握っていた彼の手をそっと離して。ガタンガタンと揺れる電車を理由に、少しだけ彼に寄り掛かったのは愛が溢れてどうしようもなかったから……。



フッと小さく笑った男の清涼感のある匂いがまた香ると、想いの丈を強くする。


家に着いたらこの幸せな時が止まりそうなほど、つよくつよく抱きしめて欲しい。


言葉だけでは伝わらない想いも、貴方からのキスを頼りに信じられるはずだから。


そしてありったけの想いを、今日からは私もベッドの中で素直に伝えようと思う。


< 94 / 97 >

この作品をシェア

pagetop