人心は、木漏れ日に似る
沖下は、名簿とトランシーバーを手に、通路へ戻ってきた。

名簿をほのみと海里の方へ傾けると、沖下はふくふくとした指を、名前の羅列の上へ走らせた。


「帰ってきてないのは……この子よ。

江上冬乃さん」


その名前を、荘田ほのみは興味深そうに眺めている。

名前だけでは何も分からないだろうに、と海里は黒インキの文字を一瞥した。


「どんな子なんですか?
江上さんて」


沖下は、それを聞くとなぜか海里の方を見て、目尻を下げた。


星園の沖下。
おっとりしていて、仕草も刺々しいところのない人。

なのになぜか、海里は落ち着かなかった。


……見られているから。

海里は、人から興味を持たれるのが苦手だ。

関わりたくないのだ。


関わって、それが面倒になって拒否したら最後、

……あの池へ、突き落とされるから。



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