ただ今、政略結婚中!
戻った私に隼人さんは気づいて、足早に近づいてくる。


「どこへ行っていたんだ?」


「あ、お、お手洗いに……」


「ストールは?」


「え?あ!落としてきちゃったみたい」


探してくるって言えなかった。


どこで落としたかわかっているから。


「探してこよう。ここにいなさい」


「いいの、私が――」


隼人さんが探しに行こうとするのを止めようとした。


スーツの肘に手を伸ばしたその時。


「亜希さん、これが入り口に落ちていましたよ」


ジョンの声にビクッと肩が跳ねる。


振り返ると、いつの間にか平静を装ったジョンが後ろにいて、私のストールを持っていた。


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