ただ今、政略結婚中！
「も、もしもし……」


緊張で声が上ずってしまう。


『何時だと思っているんだ？まだ朝の５時過ぎだ。２時間前に寝たばかりでね。早く要件を言ってくれ』


私は絶句してしまった。


結婚する人に対して、まるで会社の部下に言うような口調。


「あ、あのすみませんでした。隼人さんは私との結婚をどう思っていますか？」


『父が決めたんだ。それでいい。父のことだ、完璧な人を選んでいるだろう』


感情のない、淡々とした答えだった。


か、完璧な人……私は完璧じゃない。


「……わかりました」


私はそれだけ言うと、電話を切った。


これが政略結婚というものなんだ……。


隼人さんの気持ちを知って、心の中が寒かった。


彼が私との結婚を承諾したのは昔を覚えていたせいかもと思っていた部分もあった。


でも彼は何の感情も持っていないようだった。




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