ただ今、政略結婚中!
「いつ会ったんだ?」


「1号棟の前でタクシーに降ろされ、困っていた所へ声をかけたんですよ」


ジョンがにこやかに説明する。


「はい~。先ほどはありがとうございました~」


お酒の入っている私は上機嫌に言った。


「ジョンがいなかったら、着けませんでした~」


そうだ、ジョンのおかげ。


恩人に向かってニコニコと笑みを振りまく。


「……ジョン、妻を助けてくれてありがとう」


ありがとうと思っていないように見えるのは、私だけだろうか……。


「可愛い奥さんをほったらかしたらダメですよ」


か、可愛い奥さん……。


ジョンの言葉に頬が更に赤くなったに違いない。


「ああ。どうしても抜けられない会議だったんだ」


隼人さんが不機嫌そうに言う。


違います!きっと違う!私が来ることを忘れていたに違いない……。


< 77 / 566 >

この作品をシェア

pagetop