ヤンデレ彼氏に迷惑なほど愛されて
――何の匂いもしない。
誰かの部屋ならば、それなりに外界と内界の“差”があり、外と中では匂いが違うはずだった。
だというのに、無臭。何かを料理した匂いも、硝煙の匂いも、住人の匂いさえも感じられない。
無臭の冷たい空気だけが鼻を通る。
「寒い?」
いえ、と言う前に、彼がミナナの体に手を回した。
「エアコンないんだよねぇ。寒い時は一緒に布団にくるまろうよ」
「いいです。というよりも意外ですね。こんな部屋の造りならありそうなのに」
「もとからなかったな。マンションの改装工事中に入居したから。ここに入る前に無償でつけますよ、とか言われたけど、必要ないからそのままにした」
「もったいない……」
ミナナの部屋にもエアコンはないので必要ないと言えるが、あくまでもそれは金銭を代価にしてまでも必要か?の意があり、無償でつけるのを拒否した彼にはそうも言いたくなった。