きみとぼくの、失われた時間



マンホールを飛び越える度に気になる俺の影の存在。晴天の空の下を歩いている筈なのに影の姿は見えない。


目線を前方に投げれば、向こうに見える二つの黒い影。

しっかりと本体について歩く二人の影がしごく羨ましい。


誰かの影を欲する日が来るなんて夢にも思わなかったけど、いいなぁ、俺も欲しい。

影があれば、俺は此処にいるって、俺は此処で生きてるって感じがするじゃんか。
 

成長した二人の背を見つめる。

島津や永戸と駄弁って思ったけど、やっぱ同級生と話すって楽しいよな。年代は違ってもさ、同い年と喋るって楽しい。
 
二人と喋っても楽しい、楽しいんだけど、でも隔たりを感じる。時の壁を感じるんだ。あんなに俺達、同じ時間を生きていたのに。



―――…二人と一緒に俺、大人になりたかったな。



突風のような風が背中を押す。キャップ帽が飛ばされないよう、手で押さえる。

ザァアア、吹き抜ける風が俺の心にも吹いた気がした。


軽く目を見開いて、俺は足を止めて振り返る。真っ向から吹く風が教えてくれる。何かを教えてくれる。


でもそれが何かは分からない。

呼吸も忘れて、俺は神社のある方角を見つめる。風が俺を呼んでいるのか。

それとも風に乗って誰かが俺を呼んでいるのか。


それは分からないけれど、これだけは分かる。

 
風が訴えている。
 
俺が2011年に来た意味を。直接脳みそに訴え掛けている。

ああくそっ、掴めそうなヒントをくれている気がするのに掴めない。

< 152 / 288 >

この作品をシェア

pagetop