きみとぼくの、失われた時間


嗚呼、帰らないと、俺は帰らないと。

1996年から15年経った2011年の世界で彷徨い彷徨って日々を過ごし、いつかは消えるんじゃないかと片隅で怯えていたけれど、帰れないかもしれないと内心どっかで諦めていたけれど、今なら、はっきりと切望できる。


俺は帰りたい。

1996年のあの頃に帰りたい。


だってこんなにも家族が、友達が、同級生が、生きていた世界が俺を思ってくれるんだから。


消えてしまったことで俺は幾つもの心を傷つけてしまったんだろう?


涙声で写真の俺と話し掛けている母親の背中を見つめる。

歩んでそっと手を伸ばす。

両肩に手を置いた。


母さんは気付かない。

それが寂しいけど、俺は今はこの姿が見えなくて良かったと思う。

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