記憶の桜 -栄枯幻世-
あの人は今まで会ったことが無い程、危ない目をしていた。
あの目は多分、私が女だという事に気付いた目だ。
あの人は一体…。
「芹沢鴨。壬生浪士組の筆頭局長だ」
私の疑問を感じ取ったように、土方さんがお酒を呑みながら、さっきの男について話してくれた。
芹沢さんは筆頭局長…、つまり、壬生浪士組の頂点に立つ人。
剣の腕は一流だが、気が荒く、かなり酒癖が悪いらしい。
最近では、菱屋の妾である梅という女を屯所に出入りさせている。
「奴には近付くな。多分、あの人はお前の正体に気付いてる」
確かに、あの人には近付かない方が安全だろう。
そう思い、私は土方さんの命令に頷き、食事を再開した。