あたしの彼は『ヒドイ男』
「違いますよ。ただ見て雑談してただけです」
「よかったー。うち部署女子率低いから、かわいいふたりがいなくなったらどうしようかと思った」
なんて冗談を言いながら、左手でネクタイをゆるめ私の隣の椅子に座る。
山内さんはテーブルの上に開かれた結婚情報誌を覗きこみながら、「この雑誌、俺トラウマなんだよなぁ」とつぶやいた。
「トラウマ?」
「彼女の部屋にこれがあったら怖くない? 無言で結婚せまられてるみたいでプレッシャー感じる」
「それ実体験ですか?」
ミナが面白がって突っ込むと、山内さんは苦笑いしながらうなずいた。
「前の彼女ね。毎月何も言わずにこの雑誌買ってきて、どんどん部屋に積み上がってくの。地味に恐怖だったなぁ」
「それで別れちゃったんですか?」
「うん。俺が耐え切れなくて雑誌全部勝手に捨てたら、切れられて振られた」
「わぁ……。それ、どっちが悪いともいえないですね」
「俺に結婚願望あるか探ってたんだろうなぁ。それならそう直接言ってくれればいいのにって思ってた」
「山内さん、にぶいなぁ。彼女さんは男の人から切り出して欲しかったんじゃないですか?」
なんてふたりの会話を聞きながら、私はぼんやりと雑誌をながめていた。
そうか、結婚情報誌を見る男の人の態度で、結婚願望があるかないか、わかったりするんだ。