あたしの彼は『ヒドイ男』
 

「最近ライターすぐなくなるんだよな」

チッと短く舌打ちをしながら、カズは面倒くさそうに立ち上がる。

私のいるキッチンまで歩いてくると、長めの黒髪をかき上げて、身を屈めてガスコンロから煙草に火を付ける。
その後姿はやっぱりかっこいい。

その仕草が好きだって言わないのは、なんだかくやしいから。
いつもいつもいつも、私ばっかりカズが好きでくやしいから。

きゅんとときめいて緩みそうになる頬を引き締めて、フライパンを取り出し油を引いて火にかけていると、テーブルの上に置かれたカズのスマホが小さく震えた。

ラインかな。

と思いながら横目でみていると、煙草を咥えたカズがスマホの画面を覗きこむ。

その瞬間、一瞬だけカズの表情が和らいだのに気付いたのは、きっと女の勘。

私からのラインは既読したまま放置するくせに、カズは私に背を向けたまま返信のメッセージを打ち始めた。
たった今感じたときめきも、さっきの行為の甘い余韻も吹き飛ばす、イヤな予感が胸を覆った。


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