あたしの彼は『ヒドイ男』
抱き合った後、ソファーの上で私がぐったりとしていると、バスルームから上半身裸のカズが出てきた。
逞しい肩に、濡れた髪から水滴が落ちる。
少し長めの黒い髪が、今は濡れているせいかゆるく波打っていて、日に焼けた肌にはりついているのが色っぽい。
それを邪魔くさそうに片手でかき上げながら、カズがこちらを見た。
「えり子、シャワーは?」
「うー明日の朝にする。もう動けない」
「あっそ」
自分から聞いておいて、興味なさげな反応をするカズに、少しむっとする。
大体、誰のせいで私が動けないくらい疲れ切ってしまったと思ってるんだ。
もうちょっと優しくいたわってくれても、いいと思う。
「髪、ちゃんと拭いてから出てきてよ。水滴が落ちて床濡れちゃってるよ」
私が口を尖らせながら、バスルームからリビングまで点々とついた足跡のような水滴を指さすと、
「あ?」
カズはまたお得意の聞こえないフリ。
自分に都合の悪いことは、すぐそうやって誤魔化すんだから。