カナリア鳴く空
「淫乱」

こんなにも近い距離で、ささやくように言ってやる。

「――そうさせたのは誠司さん、でしょ?」

紅い顔でそんなセリフを吐かれても、逆効果なだけである。

「――んっ…」

優衣と唇を重ねた。

そっと手を胸に移せば、正直な躰は震えた。

「――ま、待って…」

優衣が慌てたように、私と唇を離した。

「どうした?」

そう聞いた私に、
「――ここじゃ、ママが…」

震える声で、優衣が言った。

朝香が帰ってくるかも知れない。

優衣がそう言いたいのがわかった。
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