レッスン ~甘い恋の手ほどき~
「降りるか?」
私を覗きこんでそういう彼に、首を横に振る。
「掴まれ」
きっと彼は、私がどうして辛いのか気がついている。
それでも、ほんの少しでも彼に触れていられれば、耐えられる気がするのは、私の心に、彼がくれた温もりがあるからだ。
私が彼の腕に手をかけると、もう片方の手でそれを包んでくれた。
大丈夫だよ……。
そんな言葉が聞こえてきそうな彼の手。
「お前、毎日こんな思いを?」
その言葉に俯いてしまうと、私の手を握った手にさらに力がこもった。
けれど、会社の近くの駅に着いたころには、立っているのもやっとなほど、ぐったりしてしまっていた。
そんなに簡単には、心の傷が治らないことを思い知る出来事だった。