SCHUTZENGEL ~守護天使~

 ──それは大理石だろうか、白く冷たい石造りの廊下に靴音が響く。

 神殿を思わせる大きな建造物には人の気配がまるでなく、その人物の歩く音だけが長く響き渡る。

 影はふいに立ち止まり、艶のある白い布を手荒に払うと部屋に滑り込む。

「こんな所まで何の用だ」

 男はぶっきらぼうに発して赤いソファに腰掛けるエルミを軽く睨みつけた。

 ここは闇の世界と呼ばれる空間──空は時折、美しく色を変え星々のまたたきは雲のごとく、草木一本生えていない荒涼とした荒れ地には、数多くの神殿が建ち並んでいる。

 特別な神族の善神である闇の神とその使者たちが住む世界だ。

 エルミは男の顔を見て喜んだが、すぐに表情を曇らせ顔を伏せた。
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