透明水彩


「歳は、恐らく今の美凪サンと同じです。
…ちなみに、この時代の美凪サンにはフツーに呼び捨てにされてたんで、貴方も変に畏まった呼び方しないで下さいねー。」

「あはは。わかった。……じゃあ、あたしも莱って呼べばいいのね。」

「……まぁ、そーですね。」


そんなような会話を各々の人物と交わしてから、もうすでに3日が経とうとしていた。

この時代のあたしが使っていたらしい部屋に通され、残してあった衣服やら何やらが幸いにも普通に使うことができ、今のところは何の問題もなくここでの生活を送っている。

……と、言いたいところだけれど、そう簡単に全てを受け入れることはできなかった。

みんなの気遣いも心遣いも有り難かったし、確かに不自由な点なんてなかったけれど。あたし自身が、ちゃんと折り合いをつけることができていなくて。

渦巻く不安も拭い去ることはできず、あたしの中にある潜在的な恐怖心も、更にそれを助長させているような気がした。
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