透明水彩

…――ああ、ダメだ。

自室のベッドに横になりながら、不意にそんな風に思う。

部屋に1人で篭っているような今の状況は、ただ気が滅入るだけ。
そんなことを今さらながら感じたあたしは、とりあえず部屋を出てみた。気晴らしに、アジト内を探索してみようと考えたからだ。

あたしの部屋があるのは地下2階。そのフロアには他に、藍香の部屋やドアに“MERI”と名札がかけられている部屋、そして女子用の大浴場とランドリーがある。

それらを見ながら廊下を進み、突き当たりの階段で下りるか上がるかを数秒悩む。

でも、恐らく地下3階には男子用の部屋及び大浴場があるだけなのだろうなと推測し、下には行かずに地下1階へと上がることにした。

薄暗い階段を上がり切れば、みんな所用で出払ってでもいるのだろうか、まだ正午過ぎだというのにあまりにも閑散としている廊下。

ただでさえ居る人数が少ないというのに、人の姿が見当たらない今の廊下は、何だかとても物哀しく感じる。
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