透明水彩
ハッと我に返ったときには、あたしは医務室の前に立ち尽くしていた。
こんなときでも莱に頼って、縋ろうとしていた自分自身の行動に吐き気がする。
あたしにはもう、莱に合わせる顔がないのに。
莱に会う、資格なんてないのに。
芽梨ちゃんにだって、はっきり言われた。もう、莱には関わるなと。
それでも意志に反して、あたしの体は勝手に動いた。
静かにドアを押し開け、室内へと足を踏み入れる。
どうやら芽梨ちゃんは一旦部屋で休んでいるらしく、見張り番は湊で。彼は奥の仮設ベッドで、静かな寝息を立てていた。
そんな中、出来るだけ足音を立てずに歩き、莱が横たわるベッドの傍らに腰を下ろした。
装着された酸素マスクからは、断続的に呼吸音が漏れ、規則的に胸が上下する。
僅かにのぞいていた右手を握れば、莱の手は思いの外あたたかくて。
…――生きてる。
そう改めて実感するとともに、安心感で再び涙が溢れ出した。