透明水彩
幸い、敵アジトへの道のりは、先日見たモニター上の地図である程度把握し、記憶している。
…―大丈夫、覚えてる。
ただ、途中で敵に見つかってしまったらどうしよう、そんな恐怖と不安がしだいに沸き上がる。
けれど、その恐怖を追い払うように大きく首を振り、必死に前へと足を進めた。
そしてそんな不安の中、その不安に反して敵に遭遇することもなく、とりあえず無事に敵アジトがある位置まで辿り着くことができた。
…――確か、モニターに写っていた地点はこの辺りだったはず……
茂みに隠れながら目を凝らし、いつのまにか周囲を覆い隠していた靄の中心を見つめる。
しだいにハッキリしてきたその建物の輪郭、アジトと呼ぶにはあまりにも堂々とそびえ立っているその建物は、まるであたしを迎え入れるかのように、その全貌を明らかにした。