透明水彩
考えたくはないし、疑いたくもないけれど、あたし達の仲間内に敵のスパイがいる……、かもしれない。
そう考えるのが、1番妥当であるような、そんな気がするのは否めない。
嫌な予感を抱え、ただ自滅への道だとは知りつつも、あたしは敵アジトへと足を踏み入れる。
重々しい嫌な音を響かせ開いたドアの先、そこに居たのは見知らぬ初老の男性と、25歳前後の綺麗な女性だった。
「よくここまで来たね、若き時代の高瀬美凪ちゃん。7年前の君に会えるなんて、秋臣に感謝しなきゃいけないね。」
「……何言ってんのよ、パパ。面倒事を増やされたんだから、感謝する必要なんてないじゃない。」
「まぁまぁ芹奈。そう言うんじゃない。」
誰……、なんだろう。
父の名まで出し、あたしに向けられているはずなのに、そのあたしを無視したように交わされる会話。あからさまに眉をひそめれば、男性の方とバッチリ視線が絡んだ。
「……それにしても君は、学生時代の優美にそっくりだ。」
そして紡がれた母の名に、ビクリ、と肩が揺れたのが自分でもわかった。
ここは敵アジト……
相手はお父さんとお母さんを知っている……
段々集まっては組み立てられていくピースが、ある確信をあたしに抱かせる。