透明水彩

「……あれ?美凪サン…?」


突如、頭上から降ってきた声に驚き、視線を向ける。
すると、声がした屋根の上には、たった今探していた莱の姿があった。


「…やっと、見つけた。」


思わず零れた笑みに莱は訳がわからないようだったけれど、建物の側面に設置されたはしごを指差し、あたしに来るようにと促した。

あの日と同じように、あたしに差し出された手を握り、屋根の上へと上る。ゴロンと大の字で横になる莱の横、あたしも同じように横になってみると、瞬く星に手が届きそうな気がした。


「…――懐かしい、ですねー。」


ポツリ、と零された言葉はきっと、あたしが思っていることと同じ。莱もきっとあの日、一緒に見た星空のことを思い出してる。不思議と、そう確信できた。


「……俺、覚悟してるつもりだったんですけどー、全然まだまだだったみたいです。」


そしてそう零すと同時に、握りしめられた右手。
その覚悟が示す意味を、あたしがわからないはずがない。
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