透明水彩

初めて莱が気持ちを告げてくれたとき、言った。

たとえいつか、離れなくちゃいけないときがきても……、と。

あたしだって覚悟して、あたしなりの気持ちを伝えたはずだったのに。
それでも別れを目前にすると、こんなにも気持ちが揺らぐ。


「湊センパイも理人サンも、ボスだって。美凪サンが元の時代に戻っても、一緒に居られるのに。美凪サンの時代の俺は、美凪サンのこともまだ知らないんです。」

「……あたしとは、いつ、出会ったの?」

「えーっと、確か美凪サンがハタチのとき、ですかね。その頃俺達が住んでた地域が抗争の被害に遭って。その復興支援に尽力してくれたのが、当時のボスである美凪サンだったんです。」

「へぇ。」


あたしが、ボス。
そして莱は、抗争の被害者だったんだ……

…――あれ。
でも、それがあたしと莱の出会いだったとしたら。


「ねぇ、莱……」


あたしの時代で抗争の原因であるデータが破壊されたのなら、抗争はもう、拡大しない。

すなわちそれは、莱が抗争に巻き込まれることはないということ。
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