透明水彩
「……ほら、いつまでも泣いてんじゃねーよ。なっさけねーヤツだな。」
「たっ!……湊センパイは少し、黙っててくださいー。」
莱の肩に勢い良く腕を振り下ろして肩を組む湊を、莱は睨みつける。
今ではもう見慣れた光景に、思わず零れる笑み。
「……美凪ちゃん、そろそろ……」
「うん。」
そして叔父さんに促され、来たとき同様、白い装置の中へと入った。ガタン、と閉められた装置の中で、やっぱりあたしはリングごと左手を握りしめる。
刹那、起動した装置。
一度経験した独特の感覚に、目を閉じる。
僅か十数秒の後、あたしの身体はもう、未来には無かった。
◆◆◆
目を開くと、そこは見慣れた叔父さん宅のあたしの部屋。
ベッドに横たわっていたあたしは、枕元のリモコンへと手を伸ばし電気をつける。
ついた明かりに照らされた部屋には特に、変わった様子はない。2ヶ月も経っているはずなのに。
不審に思ったあたしの耳に、ドアが開けられる音がやけに大きく響いた。