透明水彩

「……げ。マジでナギだし。」


その声に、言葉に、ある人物の姿が頭に浮かぶ。
それもこれも、あたしのことを“ナギ”と呼ぶ人なんて、あたしの周りにはただ1人しかいない。

ハッとして目の前にいる少年の横から、彼の後ろを覗き込む。すると案の定、予想に違わぬ人物が複雑な表情を浮かべてそこにはいた。


「湊……?」


湊佑稀(みなと ゆうき)。

美凪(みなぎ)と湊(みなと)の“みな”が被るのが嫌らしく、ただ1人あたしのことを“ナギ”と呼ぶ、2つ下の後輩。もっといえば、理人の生徒会の後輩にあたる。

そう、確かにそこにいたのは湊だった。風に揺れる金髪も、生意気そうなつり目気味の目元も。

間違いない。
間違いなく彼は、湊。

そう確信しているのにも関わらず、あたしが思わず名前を確かめるようなマネをしてしまったのは。


「…何か、しばらく見ないうちに、雰囲気とか変わった?」


あたしが知る湊とは少し、というかだいぶ、違うような気がしたから。
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