透明水彩
だけど不意に、ある違和感が脳裏を過ぎる。
元々、そこそこ人通りがあったはずのあたしの家の前の道路。あんな凄惨な事件があったのだから、人が近づきたがらないってのも頷けるけれど。さすがに、あまりにも閑散としている。静かすぎる。
沸き上がる得体の知れない恐怖に、ゴクリ、と唾を飲み込んだ。――刹那。
「…――美凪、サン…?」
カツリ、という足音とともに紡がれた、あたしの名前。声の主に振り向き、2人分の人影を視認したのと同時に、あたしの視界は遮られ、あたたかなぬくもりと優しい匂いに包まれた。
「…え、ちょ……? 誰!?」
あたしがそう声を上げた刹那、ゆっくりと離された身体。でもその人物――あたしと同じ歳くらいでハニーブラウン色の髪、そして綺麗なエメラルドグリーンの瞳を持つ無表情な少年には、全く見覚えなどない。
困惑し、ただ焦るあたしに気がついているのか否か、少年の2m程後ろにいるもう1人の人物から発された声は、どこか聞き覚えのあるものだった。