透明水彩
「……そんなんで、上手くいくの?」
「大丈夫。君の両親を信じなさい。」
信じなさい、って言われてもな。
無条件に信じられるほど、やっぱりあたしは素直じゃない。手紙のときも装置についても然り、簡単に信じるにはあまりにも非現実的だった。
けれど。
「どのくらい、かかる?」
そう尋ねてしまうほど、その非現実に縋ってしまうのは。
「2ヵ月、といったところだろう。それが、プログラムが全て施行され、自ら消滅するまでにかかる期間だ。だから恐らく、2ヵ月で美凪ちゃんは、安全で平和な元の世界に戻ることができるよ。」
今のあたしには、それしか縋るものがなかったから。
それしか、希望を託せるものがなかったから。
「そっか。……でも叔父さん、例え2ヵ月後にあたしが戻ったとして、お父さんとお母さんは……?」
だからこそ僅かな希望を乗せて紡いだ問いは、答えを聞くより先に、それぞれが浮かばせた表情により呆気なく砕け散った。